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本「夜の国のクーパー」伊坂幸太郎描き下ろし。猫が話す戦争のあとの支配のお話 [本]

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「夜の国のクーパー著者 伊坂幸太郎

★★★★☆(個人評価 ★多めならおすすめ)

ある日、男は海に釣りに出かけた。
妻が浮気していることがわかり気分を落ち着かせるためだ。
ところが嵐に遭いどことも知れぬ場所に寝ていることに気付く。
そして胸の上には猫。
驚くことにこの猫が話かけてきた。
「僕の住む国ではばたばたといろんなことが起きた。戦争が終わったんだ」
猫の口から語られる小さな小さな国のお話。

まず猫の口から語られるのが面白い。
猫の視点からみた人間の滑稽さが顕著に表れる。
そして本当はすごく緊迫したシーンであるはずが、猫の視点から見ることで、どこか緊張が緩和されるのだ。

小さな国で長く続いた戦争が終わった。
そして支配国である鉄国から兵士が送られてくる。
やってきた途端に彼らは、この国の国王を銃で撃ち殺してしまう。
騒然とする村人たち。
小さな国と統治し、みんなをいろんな災厄から守ってくれていた国王が殺されたことで村人たちは不安におののく。
戦争に負けた国がどれほど蹂躙されるのか…を村の老人から聞かされた村人たちはますます怖れる。

それを猫から聞いている「私」は40歳代のさえない中年男だ。
役所に勤め、せいぜい趣味と言えば株の取引をちまちま行い、平凡な生活を送っている。
ところが妻が浮気をしていたことが判明、失意のうち釣りに出かけ、見知らぬ土地に流れ着く。
そこでは猫がしゃべり、自分たちの国は戦争に負け、支配者たちがやってきた、と話す。

知らず知らず話に引き込まれる「私」
それと同時に読者もまた、猫のお話に引き込まれていく。
猫の暮らす国には、杉のお化けとでも言えるクーパーというものがいる。
それは蛹のように変態し、歩けるようになり、他人に危害を加えるのだという。
猫がしゃべる国だから、そういうこともあり得るのか…と妙に納得してしまう。

そのクーパーを倒すために、村から兵士が3人選ばれる。
兵士はクーパーを倒しても帰ってこない。
倒す際に出るクーパーからの樹液を浴びると透明になってしまうという。
透明になっても帰ってこれるやろ…とも思ったけど、そこらへんはなんか曖昧な感じ。

戦争に負けた国として兵士を受け入れざるを得なかった小さな国。
国王も殺され、これから一体どうなるのかと不安と緊張の中、敵国の兵士が一人撃ち殺される事件が起こる。
犯人探しをする兵士たち。
まずは体格の良い男が一人疑われて、兵士たちのいる家に連行される。

時を同じくして猫の世界でも異変が。
ネズミたちが「自分たちを襲わないで欲しい」と話し合いを求めてきたのだ。
ここがまた面白い。
猫たちは本能で追いかけているから、襲わないでいることは難しい…と思っている。

なんか猫たちの緊迫感のなさや、のんびりした性格、それでいて好奇心が強くなんでも見たがる…というのがリアルで面白くて仕方がなかった。
反対にネズミの生真面目さが、ネズミってそうなんだろうなぁと思わせてくれるし、よくできてるな(失礼な言い方だけど)と思えて面白い。

読んでいて、私は薄々オチも読めたし、もしかして…と疑いながら読んでたので驚かなかったけど、上手く伏線を回収し読者を騙す手法はなかなか良かった。
視点を変えた場合にどう見えるか…、そして自分たちが目にしているものがそのまんま真実を現しているとは限らない…ということ。

クーパー退治に兵士を選別する複眼隊長(帽子に目の模様がたくさん書いてある)が言う言葉が重い。
「俺の言葉を鵜呑みにする必要はない」「何が正しくて何が誤りなのか自分で判断しろ」

杉の木のお化けクーパーとは、そして透明になった兵士たちの行方は、村が困難に陥った時に助けてくれるという透明の兵士はやってくるのか、等々謎が謎を呼び、猫や「私」と一緒にはらはらしながら村の行く先を見守ることになる。

冒頭から伏線は始まっている。
しっかり読みもらすことなく読んで欲しい。
猫と一緒に村のあちこちを走り廻り謎や奇妙に思うことを拾い出していって欲しい。
ラスト近く、すべての謎が解けた時、きっと温かい気持ちになれる。
そうだったのか…と、自分自身で考えないことの怖さ愚かさを知ることになる。

物事には多面性があり、一面から見ただけではすべての出来事を把握することはできない。
でも大抵の人は自分からの視点のみで判断することが多い。
それはとても怖い事で、一度は疑ってみることも大事なんだと思う。

ファンタジーなんだけど、現実社会ともリンクしているこのお話で、猫はとっても重要な役割をしている。
そしてそれは猫じゃなきゃだめなんだと思う。
もし主人公が犬だったら…。
彼らは飼い主の視点でしか物を考えないかもしれない。
飼い主を持たない自由猫であるがゆえに見えるものがたくさんあったのだと思う。

あ~私も猫と話がしたい…と強く思ったことは置いておくとして。
このお話は猫好きな方であれば誰でも楽しめるし、犬派の方でも動物嫌いであっても楽しめる。
ようは誰でも好きになるお話じゃないかと思う。
ファンタジーの世界でも戦争という禍々しい現実があったりするけど、登場人物の愛すべき性格とか、当然猫の素晴らしさとか十分に堪能できる。
妙にリアルで、でもどこか他人事で、ふんわりした空気が漂うのはひとえに猫のおかげだと思う。
しばし現実を忘れて猫と共に杉の木の化け物クーパーがいる国へぜひ冒険に出かけて欲しい。

トムとジェリーを彷彿させるシーンや、ガリバー旅行記のようなシーンにも微笑まされるはず。

ルナ133.jpg

猫が主役とは素晴らしい小説に違いにゃい!

【本映画過去記事】
本「はじまりは愛の契約」女性ボディガード=愛人、憧れの人とのそんな契約、貴女なら結びますか?
映画「小さいおうち」昭和初期、女中さんを置いていた小さな赤い屋根のおうちのお話 
本「唇が嘘を重ねる」イラつく毎日、電車で美女と出逢う、彼女は悪魔か天使か…



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猫小物にも惹かれる今日この頃↓




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コメント 2

mitsuya

伊坂幸太郎さん、読んだことなかったですけどこれはぜひ読んでみたいですね(^_^) 猫と話せるなら奥さんの浮気も許す……かな(¯―¯٥)
by mitsuya (2015-06-11 10:37) 

youyou_s

>mitsuyaさん これ本当に面白かったですよ。はらはらどきどき、あと猫が出てくるのがまたいいですよねぇ。ぜひ読んで見てください!
by youyou_s (2015-06-11 17:03) 

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